イノシシによる農作物の破壊と夜間の出没——「なぜ起きるのか」と「効く対策」を現場目線で整理する

目次

田畑を荒らす“主犯”としてのイノシシ:被害が深刻化する背景

近年、イノシシは中山間地域だけでなく、集落周辺・都市近郊でも存在感を増し、農作物被害だけでなく、ほ場の掘り返し、ため池堤体や法面の損傷など「農地・農業用施設」そのものへの被害も問題になっています。結果として、営農意欲の低下や耕作放棄につながり、地域の基盤を揺るがす課題になり得ます。農林水産省PDF

また、農作物被害は“金額”だけで語り尽くせません。例えば掘り返しは、作物の直接被害に加えて、畦畔・法面の崩落、用水路の閉塞など二次被害を誘発し、復旧の手間・費用を膨らませます。農林水産省PDF


夜に出るのは本能だけではない:夜間出没が増える理由

「イノシシ=夜行性」というイメージは強いのですが、資料では基本的には昼行性で、人間の影響によって夜行性を示すことがあると整理されています。環境省PDF

研究資料でも、イノシシは「昼でも夜でも行動できる」柔軟さがあり、人の影響が強い地域では夜行性、弱い地域では昼に活動しやすい、という注意点が示されています。つまり「夜しか来ない」と決め打ちすると、対策の目が粗くなる危険があります。農研機構(NARO)PDF


被害の“発生条件”はシンプル:イノシシが寄ってくる農地の共通点

イノシシが集落・農地を“安全でエサがある場所”と認識すると、被害は定着しやすくなります。農林水産省の資料では、被害要因として次のようなポイントが具体的に挙げられています。農林水産省PDF

人が「エサだと思っていない」ものが、実は強い誘因になる

稲刈り後のひこばえ、収穫残さ、放置果樹(柿・栗など)は、野生動物から見れば立派な食資源です。これらは意図せず“餌付け”状態を作り、被害の温床になります。農林水産省PDF

山際が“連続”している(入りやすい)

イノシシは山林内をねぐらにし、そこから餌を求めて農地へ侵入します。森林と農地が連続していると、人目につきにくく侵入しやすくなります。農林水産省PDF

隠れ場所(藪、耕作放棄地、管理不足の林縁)がある

身を隠せる場所が近いほど「安全」と感じて行動が活発化します。資料では、植生がイノシシの目線(およそ50cm)より高くなると安心して動きやすい、という説明もあります。農林水産省PDF

人の気配が薄い(巡視が少ない)

農地やため池周辺は住宅が少ないケースも多く、巡視頻度が低いほど被害リスクが上がります。農林水産省PDF


“一晩で壊滅”が起こる:イノシシ被害の典型パターン

イノシシは雑食性で、さまざまな作物を食害しますが、特に厄介なのが**掘り返し(rooting)**です。地中のミミズや虫、根茎を狙って地面を荒らし、畑・田んぼ・法面をボコボコにしてしまいます。報道映像でも、暗闇で掘り返しが進み、周辺の地面がむき出しになっている様子が伝えられています。YouTube(NST新潟ニュース)

また、監視カメラで群れで出没している様子が確認される事例もあり、「単発」ではなく「複数頭で繰り返す」段階に入ると、被害が跳ね上がりやすくなります。YouTube(日本農業新聞)


夜間出没の“見える化”:カメラが対策の精度を上げる

夜間の出没は目視しづらく、対策が「たぶんここから来てる」「たぶん夜だろう」になりがちです。そこで重要になるのが、センサーカメラ(監視カメラ)で行動を把握することです。

実際に、農家が設置したカメラが夜間の出没実態を捉え、対策検討に役立てている例が報じられています。YouTube(NST新潟ニュース)
また、映像解析で個体数推定や被害予測につなげる研究が進み、行政事業にも採用された事例があります。YouTube(ANNnewsCH)


侵入防止の基本は「環境×柵×管理」:効く対策の組み立て方

農林水産省資料では、単に柵を立てるだけでなく、野生鳥獣を寄せ付けない環境づくりが基本であることが強調されています。農林水産省PDF

ここでは、現場で再現しやすい形に「三本柱」で整理します。

近づけさせない:藪・放置資源を減らす(誘因除去)

田畑近くの藪は潜み場になります。目撃しても放置すると、人慣れが進むことがあるため、地域ぐるみで潜み場を減らすことが推奨されています。農林水産省PDF

さらに、収穫残さ・生ゴミ等が“餌場”にならないよう、農地や家の周りの環境改善が重要とされています。農林水産省PDF

入らせない:柵は「種類選び」と「設置の質」で決まる

侵入防止柵には、ワイヤーメッシュ柵・金網柵・ネット柵・電気柵などがあります。重要なのは、対象動物と現場に合わせて選び、点検・補修まで含めて運用することです。農林水産省PDF

柵の「囲い方」も効き方を左右する

資料では、農地の囲い方として「個別柵」「グループ柵」「集落柵」が整理されています。近年は農地・施設を含む地域全体を囲う「集落柵」が増えているとされ、侵入経路の特定もしやすくなります。農林水産省PDF

電気柵は“心理柵”:通電と管理が命

電気柵は、電気が流れることを学習させる「心理柵」と説明されており、草刈り等のメンテナンス、通電を切らない(冬季も通電するなら継続、撤去するなら“学習”させない)といった管理が重要です。農林水産省PDF

また、イノシシ対策では「鼻の高さ」が重要で、鼻先で触れて痛みを学習することがポイントである、という解説もあります。環境省PDF

突破される前提で備える:点検・維持管理が“成果”を分ける

実際の失敗例として、ほ場全体を囲えていない、下部にすき間がある、草が伸びて漏電している、開閉部が壊れているなど「設置の仕方・維持管理」の人的要因で効果が落ちることが挙げられています。農林水産省PDF


捕獲は“最後のピース”ではなく、侵入防止とセットで効く

個体数が増えている地域では捕獲も重要ですが、資料では「捕獲数を増やせば良い」ではなく、実際に被害を与えている個体を捕ることが重要とされます。そして原則として、まず侵入防止柵で守り、それでも侵入しようとする個体がいるなら習性を利用して捕獲する、という順序が示されています。農林水産省PDF

捕獲手段(箱わな・囲いわな・くくりわな等)についての体系的な整理は、野生鳥獣被害防止マニュアル(実践編)にも掲載があります。農林水産省PDF


夜間出没がある地域ほど注意:人身リスクと“慣れ”の問題

夜間の出没は農作物被害だけでなく、人身・生活圏リスクともつながります。資料では、近年は農業被害に加え人身被害も深刻化しており、被害防除だけでなく広域での密度低減が必要、という方向性が示されています。環境省PDF


もう一つの重要テーマ:豚熱(CSF)と野生イノシシ

野生イノシシは農業被害だけでなく、家畜衛生(豚熱/CSF、ASF等)とも関係します。農林水産省は、野生イノシシにおける豚熱対策として、サーベイランス強化、捕獲強化、経口ワクチン散布、周知などを整理しています。農林水産省(野生イノシシ豚熱対策)


実務で使える「対策チェックリスト」(簡易版)

最後に、夜間出没・農作物破壊に悩む現場が、まず着手しやすい順に並べます(詳細設計は地域・地形で変わります)。

  1. 監視カメラで「侵入口・出没時間・頭数・群れか単独か」を把握する(夜間の見える化)
  2. 藪・耕作放棄地・放置果樹・収穫残さなど、誘因を減らす(集落ぐるみが強い)
  3. 柵は“設置して終わり”にせず、下部のすき間・開閉部・草刈り(漏電)・破損点検を運用に組み込む
  4. 個別柵か集落柵か、囲い方を見直して侵入経路を減らす
  5. 侵入防止と並行して、被害個体を狙った捕獲(許可・安全体制は必須)

(上の考え方・典型的な失敗要因は、農林水産省資料にまとまっています)農林水産省PDF

山田 太郎

この記事の作成者

鈴木 海斗

害虫害獣駆除センター 研究員

害虫・害獣の生態や効果的な忌避方法を専門に研究する害虫害獣駆除センターの研究員です。 本記事では、自社試験調査の結果や国内外の学術論文に基づくデータをもとに、 信頼性の高い情報をお届けしています。

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